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認可保育所と会計管理

保育所の設置認可に係わる規制緩和による私立認可保育所増加の背景

スタッフのイメージ

平成12年に規制緩和が実施されるまでは、国は「保育所設置に係る主体制限」(昭和38年通知)により保育所の設置主体は原則として社会福祉法人に限定していました。

しかし、待機児童の増加により保育の供給不足となっている地域において保育所の新設が緊急の課題となり、この社会情勢の変化に対応するため、国は設置主体の制限を撤廃しました。

この結果、株式会社、NPO法人、学校法人等の社会福祉法人以外の設置主体による保育所が近年増加してきた背景があります。

私立認可保育所会計管理の特殊性と管理の難しさ

認可保育所会計の特殊性

平成12年の規制緩和により、株式会社等にも門戸が開放はされましたが、規制緩和後も依然として保育所における保育は市町村が担うことが児童福祉法上求められているため、かつての措置制度時代と同様に利用者と施設(保育所)の間は、直接的に契約関係がなく(認定こども園は除く)、行政から保育サービス提供の委託を受ける形式の委託事業となっています。
このため株式会社の認可保育所では、利用者から保育所に直接利用料が支払われることが原則としてなく、保育所の事業遂行の為の収入は、ほぼ全て市町村から保育に要する費用(委託費)として支払われます。つまり、保育所の収入のほぼ全額が公的な資金(公金)の性格を有しているこのことから、収入である委託費の使途(経費の使い方)については、その会計処理の基本となる*「経理等通知」に基づいた厳格な制限があるのです。

*「子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について」[最終改正] 府子本第 367 号 子 発 0416 第 3 号 平 成 3 0 年 4 月 1 6 日

管理の難しさ

上記の特殊性により、委託費を保育所運営に必要不可欠な経費として適切に支出されているかを行政に説明するための計算書類は原則的には社会福祉会計基準(以下、社福会計という)に準拠したものを求められます。また、それをチェックするための指導検査が行政により今も行われているのです。
このため、株式会社であっても社福会計に準拠した計算書類等(拠点区分別資金収支計算書、拠点区分別事業活動計算書、拠点区分別貸借対照表)、財産目録、各種附属明細書等の帳簿を別途、拠点(保育所)ごとに区分経理して作成することが所轄の行政から求められることが一般的です。このことから、財務を既存の企業会計システムのみで管理しようとすると、一般的には下記の11ステップもの手作業による業務が発生し、膨大な時間と事務管理コストの負担を強いられることなります。

特に複数園の認可保育所を経営し企業会計システムのみで財務管理するような株式会社様では、企業会計から社福会計に組替した上で、別途、拠点別計算書類等を作成する以下の業務フローが考えられます。
STEP1 企業会計による年次決算処理(全社) STEP2 税務申告 STEP3 消費税が税抜き経理の場合は税込みに組替
STEP4 全社決算数値を拠点(保育所)別に分解 STEP5 拠点ごとに社会福祉法人会計へ組替
STEP6 本部費用を各拠点に手作業で配賦 STEP7 各拠点の当期末支払資金残高の確認 STEP8 必要に応じて積立資産の計上
STEP9 各行政へ拠点別計算書類等の作成と提出 STEP10 各行政による指導検査 STEP11 各行政による指摘事項への対応(認可保育所経営の場合はここまで)

上記の煩雑かつ膨大な書類を手作業で拠点別(保育所ごと)に作成するための時間と人的コストの負担を余儀なくされ、また専門的で難解なルール(会計基準省令と資金運用ルールに対する理解)に頭を悩まされている方も多いと思います。もはや株式会社であっても認可保育所が増えれば増えるほど社会福祉会計システムを導入して業務を標準化、効率化することでしか事実上、適切な保育所会計管理業務を実現できなくなります。


財務システムを社会福祉法人会計システムに変更して業務を標準化、効率化すると手作業の組替、拠点別数値への分解作業から解放され以下の様に非常に簡略化されたシンプルな業務フローとなります。
社会福祉法人会計による年次決算処理(全社) 税務申告(消費税を税込みで立ち上げるため組替不要) システムにて本部費用を各拠点に自動配賦 各拠点の当期末支払資金残高の確認
必要に応じて積立資産の計上 システムで区分経理することにより自動作成された拠点別計算書類等を各行政へ提出 各行政による指導検査 各行政による指摘事項への対応

社会福祉法人会計システムを導入し適切にシステムを構築しますと上記8ステップに会計業務が簡略化されます。また誰でも管理できるように標準化され無駄な手作業による業務から開放されます。この結果、保育所を運営する経営者様は、迅速に財政状態、経営成績を把握出来るようになることからシステム数値を見ながら適時かつ適切な経営判断していくことが可能となるのです。

これらの効率化のための支援業務は、専門性のある分野であり、この分野に経験豊富な専門家でなければ出来ないと思われます。
特に株式会社様においては、早期に社会福祉法人会計システムを導入して会計業務をITシステムで標準化、効率化して適時、適切に経営判断のみならず行政対応していくことが保育事業拡大のためのベストな近道であると当センターでは考えています。